「農業にいっちょかみしてみたーい」そんな私みたいなウルトラライト層にうってつけ。
農作業ズブの素人でもOK、参加できる時だけでOK、会費みたいな費用一切ナシ、しかも地域のみんなに喜ばれる━━、そんなロイヤルストレートフラッシュな農業体験がありました。
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今回の記事は、取材が楽しすぎてついつい長くなってしまったのですが、豊能町の美しい風景写真もふんだんに盛り込んでいますので、ぜひ読んでいただきたいです。前半は野菜づくりをはじめとする農業振興のとりくみ、後半は農業体験ができる耕作会員についてのご紹介です。
いったいどんな人たちがどこで作ってるんだろう?
前回のいきさつで、いつもお世話になってる野菜が作られている畑を取材することになった私たち。
NPO法人 豊能町ふるさとおこし協議会さんでは、前回紹介した購入会員のほかに、農作業を手伝う耕作会員、こんにゃく作りのお手伝いをする加工会員も募集されていて、とにかく人手不足不足(原文ママ)なのだそうです。
聞けば毎週月曜と木曜日に豊能町高山で活動されているとのこと。この日はちょうど祝日だったので、幼稚園がお休みの娘も連れて遊びにいってきました。
場所は右近の郷(豊能町立高山コミュニティセンター)のお隣。目の前に広がる広大な段々畑でもくもくと作業されているグループを発見。
こちらが農業振興を担当されている中根さん。取材に子連れで行ってもいいですか?という申し出にも快くOKしてくださいました。
中根さんはもともと某農機メーカーに勤務されており、定年退職を機に町おこしに参加。豊能町内の荒地と化してしまった農耕地の再生をめざして活動してらっしゃいます。
ボランティアとはいえ自然を相手にしたこの取り組みは、やりがいもありつつ大変な事も多いようで会社員の時より忙しいんじゃない?と奥様からぼやかれているとか。
無農薬・減農薬の野菜が作りやすい豊能
高山はその名の通り、豊能町の中でもさらに標高が高いエリア。寒冷地ゆえに害虫が越冬できないのだとか。たしかに冬場の夜から朝にかけての冷え込みとか「大阪のシベリア」と揶揄されることもあるくらいハンパないですもんね!害虫乙!
「冬は朝起きたら布団から出てた鼻がキンキンに冷えてる」というエピソードは豊能住民共通のあるあるネタですが、とにかくそういう土壌のおかげで無農薬・減農薬の野菜が比較的育てやすいそうです。
とはいえ季節や品種によっては、どうしても農薬に頼らないといけない時もあるらしく、その場合でも有機肥料を使用したりとできるだけ減農薬の方向で取り組んでいるそうです。この方針は、子どもに農業体験させたい親としてもうれしいポイント!
プロ農家はほぼ毎日農作業しますが、こちらは週2回の活動。その都度有志のメンバーでやりくりされているそう。本当はもっと手入れをすれば、いい野菜が効率よくたくさん収穫できるんだけど…とボランティアならではのジレンマも。
このとき栽培されていたのは、キャベツ、ブロッコリー、サニーレタス、ロメインレタス、水菜、白菜、小豆など。
「レタスって長野県産が有名なので高地でしか採れないイメージでした」って言ったそばから、あ、そうか。ここも高地なんだと気づく衝撃。
なぜ耕作放棄地が増えているのか
このあたりの田畑は「変形畑」といわれる長方形をしていない畑が多く存在します。しかも山の斜面に沿って階段状に設計されており、それがいわゆる段々畑や棚田と呼ばれるものなのですが、実はこの立地、耕うんする際に便利な効率の良い大型機械が入らないのだそう。ただでさえアップダウンが激しい斜面、高齢化という社会現象も手伝って、農業をリタイアする方が増えてしまっているとのことでした。
段々畑や棚田はなんともフォトジェニックで美しい景観ではありますがそんなデメリットがあったとは。
中根さんも農機メーカー勤務時代からご自分で耕運機を使って農作するのが密かな夢だったそうで(よーし!大型のやつ俺も動かすぞー!)とウキウキしていたのに、畑に機械が入れられない事態に心底がっかりしたそうです。
いざ農業体験!
柔軟でありがたい!いつでもウェルカムな活動日
活動日は月曜・木曜の週2回、朝9時から15時まで。いまのところ平均4、5名で作業されているのですが、まだまだ手が足りない状態だそう。
とはいえ、あくまでボランティアなので「あ、この日なら行けるな」「2時間だけだけど…」といった各々の都合に合わせた範囲での参加でも大歓迎とのことです。参加表明については「別に当日でも連絡くれたらいいよ」とのこと。予定がコロコロ変わっちゃう育児中の主婦にも、これはありがたい!
ズブの素人でも大丈夫?
こちらとしては心配なのが「農業のシロウトがのこのこ行って、はたしてお役に立てるんだろうか……」という点。
中根さんにずばりお伺いしてみたところ、その日の作業については都度きちんとレクチャーしますよ、とのことで私たちも一安心。
この日は雑草抜きのお手伝い。
「その日によっては楽しくない作業もあるかも…。収穫なんかは楽しいけどね!」 と中根さんはしきりに気にされていたのですが、ただの雑草抜きなのにやってみるとこれがめちゃくちゃ楽しい!ぷちぷち抜いたり、農機具をつかってサクサクサクサク…ついつい没頭してしまいます。畑の土いじりがこんなにも楽しいだなんて!
わたし砂場遊びやどろんこ遊びが大の苦手で、子どもに誘われてものらりくらりとかわしてしまうタイプなのですが、手入れされた畑の土って気持ちいいんですね。ぜんぜんイヤじゃない。
持ってくるもの
- 長靴
- 軍手
- (お昼まで作業するなら)お弁当
事前に教えていただいたのに、舐めてかかってスニーカーで行ってしまった私と夫。雨が降った翌日だったのもあり、かなり足元がぬかるみました。(人の話はよく聞かなくっちゃな…)反省して次の日にコーナンへ長靴を買いに行きました。
おすすめの服装&あるといいもの
日よけやケガ、毒虫対策として
- 長袖
- 長ズボン
- 帽子
- 首に巻けるタオル(蜂は首を狙ってくるとのこと)
熱中症対策として
- 携帯しやすい水筒
- 飴
お昼まで少し時間があるということで、こんにゃく加工の様子も見学させてもらうことに。
こんにゃく作りを極めんとす、ひとりのスーパーマン
場所を移動してむかったのは、畑のすぐとなりの「右近の郷」の中にある調理実習室。こんにゃく加工を担当されている中崎さんが迎えてくれました。
なぜ豊能でこんにゃく?
町外へもアピールできるような特産加工品がなにかできないものかと思案する中で生まれた「手作りこんにゃく」。こんにゃくパウダーを使った製法が多い中、ここでは100%こんにゃく芋を使用しています。プレーンタイプのほか、豊能町の特産物ヤーコンを練りこんだヤーコンこんにゃくも製造されていました。
こんにゃくが出来上がる工程を今回初めて知ったのですが、かなり工程を踏んでいて、芋の皮むきから茹でて潰して〜凝固〜加熱〜冷却、そしてパッケージまで、手間と時間のかかる加工を、なんと中崎さんおひとりで手がけてらっしゃいます。
こちらのこんにゃく、このたび北新地の高級料亭での取り扱いが決まったそうで、自慢の生芋こんにゃくなのです。
(中崎さんてば、いったい何者…?)あまりの手際の良さに驚愕していた我々。聞いてみると某有名フードサービスの商品開発部に勤めてらっしゃったという経歴の持ち主。調理実習室内の道具もフル稼働させつつ、より美味しいこんにゃくを効率よく作るために、ご自分でオリジナル器具を作っちゃう発明王でもありました。
むすめの大好物である「ロングラン商品のあのお菓子の名前の由来はなにか」なんていうトリビアにまで話は弾みます。おしゃべりしながらも、とにかく忙しく動き回る中崎さん。ワンオペだとさぞ大変だろう、とその苦労のコメントを聞き出そうとするも「ん、もう慣れちゃったね」となんとも軽やかなお返事。
こちらのこんにゃくは、前回紹介した購入会員になるほか、志野の里、妙見口駅のかめたに本店でも購入できるそうです。このあとさっそく購入して実食してみたところ、市販のこんにゃくとはちがって、まるで葛餅のような美しい透明感とやさしい食感。ヤーコンこんにゃくのほうは味わいはそのままに栄養価がUPしているそうなので、食欲の落ちた夏、さしみこんにゃくなんかにすると良さそうです。
みなさんと一緒にお弁当タイム
農家の嫁でもないと体験できない数々。(こういうの一回やってみたかった!)の連続。
現在、耕作会員の方達の平均年齢は68歳。若い人たちが関心を持ってくれれば、と話されていました。
メンバーの中には、なんと西宮から2時間半かけて通っているというご婦人も。「農業体験ができるところが増えてきて色々なところに行ってみたけれど、ここの魅力は何と言っても携わっている人!みなさんが素敵なんです!」と教えてくれました。
たしかにみなさんの経歴がすごすぎて「インテリジェンス漂う農業」といった風情の耕作会員の面々。TBSの「がっちりマンデー!!」がここだけで1ヶ月分撮れそうなくらい濃厚です。
いそのー!畑仕事やろうぜー!
この体験は、ぜひとも子連れファミリーに激推ししたい。お金をかけずに充実の1日になること間違いなし。
惜しむらくは活動日が平日であること。土・日に活動日があれば「今から遠出するのものなー」なんて持てあました休日、公園のように通って喜んでお手伝いするのに…!
自然の恵みのお土産がうれしい
基本は無償のボランティアなのですが、この日は運が良かったそうで、美味しい収穫物のお土産をどっさりいただいてしまいました。
この野菜分配も自然のものなので毎回用意できるとは限らないんだけど…と気にされていました。
こんなに気軽な農業体験、無料でとなると農家に知り合いがいない限りぜったい無理。今、気持ちが会員登録に揺らいでいる方は、野菜はもらえたらラッキー!くらいで、どちらかというとこの気軽な農業体験を対価と考えるといいかもしれません。
豊能町だけの農作物で献立ができるって知ってた?!
帰ってきたその日の夕飯は、豊能町産の野菜とお米だけで作ってみました。大根の間引き菜とウィンナーの炒め物、手作りこんにゃくの煮物、肉なし肉じゃが(ようは玉ねぎとじゃがいもだけ)。お肉ないと物足りないかしら…とびびってウィンナーも入れてみましたが、完全に失敗。かえって邪魔。野菜だけの味で十分でした。
“地に足がついた生活”の満足度がすごい
ちょっとなにこの贅沢…。土いじりして、畑の恵みをいただく。これが、いわゆる「地に足がついた生活」なんでしょうか。
子供の食育にもいいかもーなんて軽く考えてたけど、大人の私がすごく感動。
肝心のお野菜の味といいますと、なんかね、めっちゃうまいんです。玉ねぎは「あれ?淡路行かなくてよくない?」ってくらい大きくて肉厚で甘くジューシー。じゃがいもも男爵なのに煮崩れしにくく味が濃い。じゃがいも特有の青臭さがなく旨味だけがぎゅっと詰まった感じ。これは地元愛が生んだ、ひいき目フィルターがかかっているんでしょうか。
誰がどうやってつくったか、という今回の知識はご飯を美味しく食べるためにすごく有効。産地直送の野菜によく生産者の顔がわかるシールが貼ってありますがそれの究極版ですね。
わたしたちも耕作会員としてさっそく登録したので、野菜づくりにもっと携われる分、きっともっと美味しいんだろうな、と今から楽しみでなりません。
耕作会員になるには
豊能町ふるさとおこし協議会さんの会員募集ページをご覧ください。
3 コメント
[…] とよのていねいでもご紹介した豊能町ふるさとおこし協議会さんのお野菜。(紹介記事はこちら)「食べたことない」「一度食べてみたい!」という声も……そこでたっぷりと冬野菜を味わってもらうためにお鍋にしました。今回はお鍋を囲んで、みんなでお野菜の味を楽しむ座談会形式。ほうれん草、白菜、春菊、高山真菜など冬のお野菜がたくさん揃い、参加者の皆さんが到着されるのを心待ちにします。 […]
[…] 加えて中崎さんの手がける「手作りこんにゃく」は、高山の棚田で育てた無農薬・減農薬コンニャク芋を筆頭に国産の生芋を使用しており、手間暇……本当に手間暇かけて製造している […]
[…] 次回へつづく。 […]