総勢110人!いい大人たちが歓喜の大立ち回り「ナートゥ・フェス」レポート

by 頼子 2023年7月28日

「ナートゥを先生に教えてもらって一緒に踊ろう!そのあと本格インドカレーを食べよう!」

これ以上ない単純明快なイベントを兵庫・川西で開催。のべ110人の映画「RRR」ファンが踊り狂った、2023年7月8日(土)の奇跡ナートゥ・フェスをご存じか。
今回は当日の様子とそのいきさつをお話したいと思います。

とよのていねいメンバーの「映像制作JOYNT」さんによる、アフタームービーをまずはどうぞ。

会場は兵庫県川西市にあるモルックドームさんにご協力いただき、一日貸切りで。音響・映像機材完備・収容人数およそ100名・全天候型の野外グラウンド…まるでこのイベントのために用意された会場みたい!私が思わず勘違いしてしまったくらい、今回の成功は会場によるところが大きい。

住宅街から一歩離れると現れる、水と森と大地に囲まれた全天候型の野外グラウンド

イベント中はとにかく良い写真ばかり。大人たちが揃いも揃っていい顔をしているので、正直選別が難しかった。この現場の熱量が少しでも伝わればと、写真多めでお送りします。

映画みたいにかっこよく踊ってみたい者たちが集まった

本会場は、都会から離れている分、万人にとってアクセスが良いとは言いがたい。にも関わらず、そのほとんどが片道1時間以上かかるエリアからの参戦。京都、滋賀、和歌山、広島、名古屋とはるばる旅行レベルで遠征いただいた方もちらほらいて、改めてRRRの強力な引力を実感するなど。

踊り続けろ!

ナートゥを1時間踊った者たちの面構えを見よ

午前回のメンバー。グループ&コスプレでの参加が多めだった。めちゃくちゃノリがいい!
午後回のメンバー。予習してきた方が多かったのか、総合再現率が高く大いに盛り上がった!

ヨナナさんのインドカレーを召し上がれ!

たっぷり汗をかいた後には、お待ちかね!ヨナナさんによる、スパイスが入った本格インドカレーを。

ココナッツチキンカレーの他、ヴィーガンの方向けに豆をつかったダルカレーも選べました。

スパイスたっぷりのカレーは食べて美味しい。そして元気が出ます。さすが熱気の国インドの食べ物。あんなにヘトヘトだったのに、超回復する面々。

供給不足のファンがひねり出したRRR小ネタの数々

カレーのふるまいとともに同時オープンしたのは「お楽しみミニマーケット」。はるばる足を運んでくれたドスティ*達にすこしでも喜んでもらえたら…と用意した、おもてなしコーナーです。

ラーマ少年が射抜いた的グッズ

モルックドームさんに制作いただいた「ラーマ少年が射抜いた的」。持ち歩きに便利なキーホルダータイプと、ほぼ原寸大タイプがあります。一枚一枚心を込めた手仕上げ仕様です。

原寸大は玄関に飾るとすごく不穏なので魔除けになりそうです。ちなみに会場でお買い求めいただくと、いちいち弾薬庫をズルズル引っ張ってきて在庫確認しました。

コムラムビームドの葉っぱ

食用としても使える、柏餅の葉っぱを農家さんから取り寄せました。両面テープも医療用なので敏感肌の方も安心して大地女神の子になれます。

ラッチュのペンキネイル体験

捜査の決め手になった、あの「ラッチュのペンキ爪」を再現できるコーナー。地元の小学生ががんばって雑な仕上がりにしてくれます。

塗って3日目あたりから余分な部分が削れて、より自然にそれらしく。汚れた爪が視界に入ると「いつでもラッチュと一緒」と、思わず気分がるん♪ってアガります。

ちなみに翌々日の偉いさんとの名刺交換もこの爪でやりました。ペンキ工と思われたかな。

Dostiかるた展示・体験

映画に登場した、印象的な言い回しの数々を「かるた」に。イベント3日前に思いついて突発的に作ったわりに、めちゃくちゃ出来が良くてみんなに遊んでもらいたい自信作になりました。ファンにしか遊び方がわからないのでは…と心配した一方で、ファンならひと目見て遊び方がわかる!と評判です。

札は3種類。赤の札が上の句、青の札が下の句、もう一枚のカードは答えカード。
基本のあそび方は「上の句を読み手が読んだら、残りの人は早いもの勝ちで下の句を取る!」です。

名ゼリフ揃いのRRR、ぜひ声に出して下の句の札をはたき落としてほしい。

はっきり言って全コーナーが小粒ネタ。「法人でこれ?」と思われてしまうかもしれないのですが、例えるならば、いちファンでしかない主催の私たちが、村で手に入る素材をありったけ使って、RRR愛を表現したものばかりです。何かのカケラでもいい、少しでも劇中の世界に触れていたい、”好き”のお風呂に浸かってたい……ファンの願望が具現化するとこうなります。

その他の思い出シーンいろいろ

ここにはドスティ*しかいない。夢の安全空間

ヴェンカテスワルルおじさん「成し遂げたな」

ナートゥ・フェスは、運営側と参加者側が双方ともが「楽しむぞ!盛り上げるぞ!」と同じベクトルでシンクロし、完走した奇跡的なイベントでした。
RRRが持つ強力な引力で集まったとはいえ、これほどまでに良質なイベントになったのはなぜか。イベント後も度々考察をすすめていますが「劇中のラーマとビーム”あのふたり”に魅せられ、憧れている人達の集まりだから当然ちゃ当然で、だからこそRRR以外では希少な現象」と私は結論づけています。そのくらい、みなさんに素敵な夢を見せてもらった気分です。

会場は、都会から離れた山奥で。
ダンスが下手でも大丈夫。その日の付け焼き刃だって構わない。
強火も弱火も何RでもRRRがいい!というひと時を、みんなで共有できたらきっとめちゃくちゃ楽しい!

上記のような「参加ハードルはそこそこ高いが、越えた先の間口は広い」特色も、結果としてよい影響をもたらしたように思う。

この会場にはドスティ*しかいない──それは彼・彼女たちが一番のびのびできる安全地帯。安全地帯だから、ダンスに自信がない人も一緒にチャレンジできる場になった。なにしろ、ダンスの精度に関しては主催側・企画発案側がヘロヘロの付け焼き刃だった。

そして安全地帯だからこそ、普段控えてたオタク発言大歓迎!めいっぱいコスプレしよう!秘蔵の推しグッズも見せあいっこしよう!と開放的な雰囲気が自然発生的したことが、私達にとって大変嬉しいハプニングだった。

イベント後にtwitterをエゴサしてみましたところ「次回の応援上映で、教えてもらった通り踊るんだ!」と意気込んでいる様子や、何度も観ているはずのNaatuNaatuなのに「ここはもっとこうするのか」と、何度も観ているはずのRRRの解像度がさらに挙がった様子。それぞれに余韻は続いているようで、ほほえましくウォッチしています。

*ドスティ[Dosti] …作中では「友情」。ファン間では「心の友」「RRRファン」という意味でも使用される。

ナートゥ・フェスできるまで外伝

ここからは「おなじといっしょ」コラボでお送りします。

「まーた夫が好きそうな世界観だなぁ。」

夫がYou Tubeの「ナートゥ・ナートゥ」シーンを再生した際、わたしの初見はこの程度の感想だった。あーヒゲとスーツねー。あーインド映画、だから歌とダンス。

「Naatu Naatu」がゴールデングローブ賞やアカデミー賞を受賞したニュースを耳にする中、映画「RRR」を観に行ったのはかなり後。未就学児6歳のおとうと、小5のむすめを連れ、家族4人でIMAX鑑賞。やべ、3時間……MARVELの映画でも途中退席したおとうと、いけるかしら……

いよいよナートゥのシーンになったら、おとうとが踊りだした。え、めちゃかわよ……かわいいけど周りに迷惑かからないようにとチケット張り込んで大きめの座席にしといてよかったー!と安堵し、ふと横列を見ると、みんなスクリーン見てニコニコ笑ってるんですよね。スクリーンの光がみんなの笑顔を照らしてるの。なんていい瞬間、なんていい映画なんだ……。

笑えるジョークを言うシーンではなく、ヒゲの2人が軽快に、切れ味抜群で踊ってるシーンでみんながついついニコニコしてんですよね。これってすごい。

※ちなみにRRRの良さや考察は、gさんによる「RRRによって生まれた狂人による幻覚」にすべて集約されています。1度でもご存じになって余韻の供給不足の方は、ぜひ読んでみてほしい。何度読んでも、鮮明にワンシーンワンシーンが浮かんでくる。

家庭内そして社内がインドじみてくる

RRRを観てからというもの、家庭内でインド熱の火柱が上がりました。朝起きて・移動中・夕飯時・寝る前・旅行中・とにかく寝る間以外は全部インド映画のMV(ミュージックビデオ)を流してないと不安になる特異体質に。MVを流すことが困難な状況では、インド料理(スパイス)を口にして成分を補っています。

とにかく、今、インド映画のMVがたまらなくイイ……。

BGMはもちろんインド
インド成分不足に陥った例

そのほかも「インドミュージックをカタカナで歌いてぇ!」とAI技術をぶっこんで字幕をつけたりする夫。

そんな調子だから、就業中のBGMもインド。弊社ひとりしかいない社員さん、逃げ場なし。(ちなみにインドミュージックをBGMにするとデスクワークの効率はちょっと落ちます(笑))

「みんなでこれ踊らない?」とナートゥを紹介するのだって、時間の問題だった。

ただ一点、今でも解せないのが、次の休日あたりにサクッとホームパーティレベルでやるはずが、いつの間にか社内の一大プロジェクトになっていたこと。

「映像あり」のダンスワークショップ誕生

弊社、曲がりなりにも制作会社なので、しっかり著作物を守りたいし、できるならすこしでも還元できる形を取りたい。とはいえ、企画当時はJASRACにも登録されておらず、インドの音楽レーベルへの入口も皆目見当がつかなかった。藁をもすがる思いで「日本の映画配給会社 ツイン」さんの”お問い合わせフォーム”という名の門を叩いたのでした。

前例がないと戸惑いながらも「楽曲の権利は持ってないけど、映像としてシーンを流すなら許諾できます。」というなんとも粋なお返事。それだけじゃない、「公式の宣材写真をお送りします。」とな!

WEBデザイナーの私大歓喜。デザイナーという人種は良質な宣材写真が何よりの大好物でして。ハリウッド映画サイトの経験もあったので、ウヒョー!!とイベント特設サイトを作りました。

予定より大幅に予算オーバーではあったけれど「映像ありでいくか!!」決意した瞬間でした。

こりゃあ最低でも100人規模で楽しまないと失礼やぞ…

これ以上ない良質な素材は手に入った!それなら、より多くのファンと一緒に楽しまないと…!

一種の使命感にも似た感情が芽生えます。それまでは、ご老人のゲートボールに紛れて近所の公園で踊ったっていい、などと話していた草レベルから一変。100人収容できる会場・映像使用料とともにペイできるような企画へと成長させることになりました。

覚悟を決めたらピースが埋まる

インド映画群舞シーンの真骨頂は「土煙」でしょ!

本企画を進めるにあたって譲れなかった大きなポイントは「土煙が上がること」。しかし屋外となると天候問題がついてまわる。ただでさえ急な雨や日差しと過酷になりがちな夏。屋内運動場と天秤にかけるしかないか……と思った矢先、思い出したのが「モルックドーム」さんだったのです。

土煙、上がる。
屋根、ついてる。
スクリーン、音響、舞台、完備。
駐車場、50台完備。
トランポリンもあるし、スモーク機材やシャボン玉マシーン、クジャクに餌もやれるアンド ソー オン。
完璧….!!!

「絶対この人に教えてほしい」

と心に決めていたダンス講師がいた。それがSACHI先生。大阪市内で活躍するZUMBAの人気講師である。運動神経やリズム感の有無なんて関係ない、全員を最高の境地へ連れてってくれる先生。

普段はZUMBAのインストラクターさんですから「今回のナートゥは新たなチャレンジであり新境地でしたね。」と語る。それでも無理を言ってお願いしたのは訳がある。先生はネイティブ民族が素足で土を踏みしめて踊るような、体幹が物を言うダンスがめちゃくちゃかっこいいのである。

ぐらつかない先生の体幹
先生みたいにかっこよく踊りたい!

今回でSACHI先生のファンがたくさん増えたんじゃないだろうか。「体育祭の練習を思い出した」という意見もあったように、ほんのちょっとだけスパルタ、でも気持ちいい。ダンスを”楽しい”とこまで導いてくれるプロのインストラクターってすごい。

「カレー食べたい!本格的なやつ!」

声をかけたのはヨナナさん。地元、兵庫県川西の黒川というエリアに店舗を構えるヨナナさんはカレー屋さんの傍ら、数年前から「黒川インド化計画『ヨナウッド』」というぶっとんだ計画を手掛けている。土曜は貴重な営業日だったにもかかわらず、本店を閉め(!)ふたつ返事で会場へ駆けつけてくれた。

ヨナナさんも後ろでおどってくれてた

その他、ダンスイベント映像制作の経験が豊富な映像制作 JOYNTさんには当日の撮影および編集を。

久保田 幹也(字遊堂)さんには、弊社初となるプレスリリースを執筆いただいた。

各方面のプロフェッショナルとつつがない運営に尽くしてくれた頼もしいスタッフの面々に支えられて、本イベントはできたのです。改めてお礼と感謝を。


Specialthanks

調整役…相澤 由依
スタッフ…八束 伶奈 / 竹口 誕・和希・陽向・玲於 / 徳見 賀洋子・遥 / 宇都宮 八重子
企画監修…宇都宮 正宗

ナートゥ みんな 踊る。カレー みんな 食べる。

と書かれたプレスリリースや特設サイトを読み「そりゃ楽しそう!」とピンと来た人々によって、twitterを中心にチケットは即完売した。考えてみればそうだ。観るだけでニコニコしちゃうダンスなんだから、みんなで踊ったらそりゃ楽しいに違いない。これが世界レベルのキラーコンテンツ、説明不要の力。

一般的にダンスイベントやアクティビティは踊れる人・動ける人のものと思われている。「体を動かして、ご飯を食べる」これはスポーツ系イベントでは定石とも言える定番の方法だけれど、インドア傾向にあるオタク・推し活動とダンスを繋げたところに今回新規性があったのかもしれんな…とあらためて。

イチから教えてもらえる憧れのダンス。高難易度のナートゥだけど、踊れなくても楽しいご指導に振り切っていただいたことは大成功でした!アンケートには「絶対踊れないと思っていたナートゥを全力で踊れて嬉しかった!」という声が並んでいます。

ナートゥ・フェスは、主演のふたりにあこがれた全員が、間違いなく命を燃やしたイベント。
わたし今、燃え尽き症候群です。

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