2024年10月13日 大阪・関西万博開幕半年前イベントとして、大阪梅田を縦横断し開催された、HH EXPO、EXPO OPEN STREET、EKI EXPOの3つのお祭り。前編では、当日までの様子を中心に《 渦中にいた者》として内側からの景色をここに残しておきたい。
都会の梅田を縦横断!遊びで「ゆるめる」大阪万博半年前イベント
2025万博が大阪・夢洲に決まる前から、そして今も容赦なく「でも、やろう。」の種を撒き続けるdemo!expo。企業に、一般人に、クリエイターに、文化人に、都会に、郊外に、キーマンに。
また誰かが言う。「これって結局、何がしたいの……?」
そこにちょっぴり意地悪な気持ちがあるのか、それとも純粋な気持ちなのかは関係なく、もはやお決まりになったこのセリフを「うるせェ!!!いこう!!!!」と一蹴するかのような、議論不要の光景に私は遭遇した。
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大阪梅田を走る、阪急電鉄、阪神電気鉄道、JR。普段はお互いにバチバチにライバル視してるにちがいない(個人の偏見です)超大手鉄道会社でさえも、”口実”さえあれば手を取り合う。いや、ずっと前から手頃な口実を待っていたんじゃないか。そんなふうに勘ぐってしまう、息の合った好例を見せつけた2024年10月13日──大阪・関西万博開幕半年前イベントのことである。
企画を知ったみんなの夢は日に日に膨れ、広範囲に飛び火し、うめだを縦横断し同時多発的に開催された。舞台となったのは、以下のランドマークエリア。
- 阪急大阪梅田駅近く サン広場
- 阪急百貨店横2F通路
- HEP FIVE壁面〜EST通り
- JR大阪駅 アトリウム広場
- JR大阪駅 旅立ちの広場
- JR大阪駅 時空の広場
- JR大阪駅前 南側歩道
阪急電鉄、阪神電気鉄道、JRそれぞれの管轄エリアになぞらえて、HH EXPO、EXPO OPEN STREET、EKI EXPOと3つの名前が名付けられた。これらの点在するエリアには、各界で活躍するプランナーが担当。
- 朝戸 一聖 さん(TANSAN)
- ボードゲームの黎明期から携わった作品は250以上、関西が拠点のボドゲ制作会社TANSANの代表。ゲームとアートとのディレクター、ゲームデザイナー。ゲームが好き。
- 左子 光晴 さん(ヨーロッパ企画)
- 大阪府出身。ドラマや舞台、某テーマパークでアトラクションの脚本・演出を手がける。高校の文化祭で書いた劇がウケ、忘れられず、脱サラして脚本家に。
- かわかた たまみ さん
- 大阪府出身。SCRAP創業メンバーとして「リアル脱出ゲーム」のディレクターとして活躍。渡米し、海外展開も担当。夢はムーミン屋敷を作ってムーミンママになること。
- 山根 シボル さん(株式会社 人間)
- 株式会社人間 代表 兼 アイデアマン。「面白くて 変なことを 考えている」をモットーに、すべて大喜利のお題と捉えることで、いつも前例のない広告を作りたがっている。
- 河カタ ソウ さん
- 大阪府出身。企画・脚本・ディレクター・コピーライター。エンタメとブランディングを生業に、Web、映像、イベント等、領域や媒体を横断して活動。現実と虚構を曖昧にするのが好き。
- 儀間 建太 さん(iiie マネージャー/愛はズボーン)
- ロックバンド「愛はズボーン」のボーカルとスーパーエンターテイナー担当。アメ村のクラフトビールショップ&ギャラリー[iiie]のマネージャーであり、空間制作や立体造形のディレクションも手掛ける。
この百花繚乱プランナー群に紛れる形で、とよのていねいの宇都宮もプランナーのひとりとして、実は白羽の矢が立てられたことは、あまり知られていない。
それもそのはず、このポスターはせっかく作ってもらったのに、会場の制約で貼る場所がなく、イベント中行方不明になっていた幻のポスターなのだ!!(イベント終了後、荷物の奥から出てきた。よかった、誰かに踏まれてなくて。)
『いのち輝く未来社会“梅田”のデザイン』未来の梅田とは?
demo!expoのしまだあやさんからそれぞれのプランナーに課せられたお題。それは、
2025大阪・関西万博全体テーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」になぞらえて、梅田で万博するとしたら。未来はどんな梅田になってほしい?利用層や場所の制約や課題と向き合いながら、プランナー自身がそのエリアを訪れるペルソナ(登場人物・利用者)になりきって、自分たちのカルチャーも注いで表現してほしい!
とのことだった。
他プランナーのカルチャーは、音楽、装飾、パフォーマンス、演劇・脚本、ゲーム、遊び、謎解きetc……
じゃあ私たちのカルチャーって?都会の挑戦的なビッグイベントで、わざわざのピースのひとつとして期待されていることってなんなんだろう?
郊外・まち・田舎住み……etcいわゆるローカル地域で、暮らすこと、育児のこと、真剣に年を取ること(素敵なエイジングとサブカル)を考えてる私たち。
都会>田舎のヒエラルキーは古い、のかもしれない。
地元豊能町での「EXPO酒場豊能店」「とよのパビリオン」、demo!expoプロデュースの「まちごと万博@なんば」「EXPO TRAIN 阪急号」と、この一年で濃い付き合いをさせてもらっているdemo!expoの今村さん、阪急阪神不動産株式会社の皆川さんからのメッセージがピロリン♪と音を立てたのは今年2024年8月のこと。
本イベントの立役者でもあり、普段から商業開発・にぎわいづくりを通じて梅田を見つめ続ける皆川さんは、「梅田はどんどん機能的になる一方で《情緒的価値》が失われているんじゃないか、買い物して食べて帰るだけではなく、人の面白さを通じた大阪梅田の文化を再興して育てていきたい──。そんな話をJRの出口さんと話しているんです」と教えてくれた。
既視感
この時、私は過去に聞いたトークセッションの数々を思い出していた。先駆的な企業の優秀な人たちは、社名や肩書きを越えたり過大解釈して、これまで以上のことをやりたがっていること、そしてそれを決まって「余白」「遊び」と名付けていること、どうやら何かを埋めようとしていること。
田舎住みのわたしたちは、人が集まる都会、便利な都会には敵わない、そう思っていたけれど。
人口減・不便・資金含めてリソースがない・垢抜けない・一般人…… われら最弱カードを持つ者たちの唯一の装備品「想像力と手作り」という方法。
もしかして都会でもこの方法が案外有効なんじゃないか。その仮説が生まれた瞬間だった。
「私たちがやりたい万博」を探して
EXPO酒場主催やdemoexpoさんに誘われたまちごと万博の《勝手》万博もりあげ活動を終えるたびに、毎回自分たちの棚卸しをしているのだが、現時点でもしぶとく残る結論は「『みんなの持ち寄り文化祭』を万博でやりたい」だった。
いわゆる交流会が苦手な私たちは、とよのパビリオンで味わった、プロ・アマ・一般住民が混在しながらも、みな同じ方向をむいて楽しむ姿勢の《無差別級・持ち寄り文化祭》な雰囲気が、とてつもなく居心地がよかったのだ。
移住は都落ち?
私たち夫婦は、大阪市内から豊能町へ8年前に家族とともに移住した。自身も実際仕事の都合上、ギリギリまで都会にしがみついていたし、ズバリは言われないけれど移住にはまだまだ「都落ち」のイメージが強いように思う。
20年以上、WEBサイトやSNSなどで「世間に広く情報を知らせること」を生業としている私たちだが、消滅可能性都市とまで言われる少子高齢化・人口減の豊能町内では、これまでのやり方での情報伝達はハッキリ言ってまったく歯が立たなかった。
ローカルのにぎわい作り、すなわち一点集中ハードモード
そんな中で、下手なりに地味に刻んできた結果が今の私たちなのであるが、その道中で、様々なにぎわいづくりに出会うことができた。ローカル地域のにぎわいづくりは、人がさほど滞留していない場所にわざわざ・はるばる足を運んでもらうことが前提かつ不可欠な条件になる。そしてその難しさは、不便な奥地へ行けば行くほどよりハードモードに。
それが常である環境に身を置きつつ、距離や交通の不便を軽々乗り越えさせるだけの特異な「ここでしかできない体験」を提供している人に出会った。モルックドーム 中博司さん(川西市)、こどもオモ部主宰 ジョーこと的場聡子さん(川西市)である。
モルックドーム (川西市)
こどもオモ部(川西市)
初期装備で日々筋トレしている、まちの猛者たち
ふたりに共通しているのは[ 想像力 ][ 手作り ]という無課金ユーザーでも持ってる初期装備を、ラスボス戦でも戦えるくらい独自路線で磨き上げていること。毎回誰のまねでもないオリジナルで、想像もつかない「?」をおそるおそる試してみたらそこから広がる景色は見たことのない景色で。
ただの奇想天外な変人だったら独りよがりになっちゃうものだが、ふたりの周りにはいつもたくさんの人がいて、はるばる会いに来る人がいる。独自路線 / ひとことで説明できない=わかりにくい=人に伝わらない=人が集まらない……そう思い込んでいた私には、またそれが不思議で。(まんまと私もはるばる会いに行ってるので、渦中のひとりなのだけれど。)
── めまいがする。これまで自分が築き上げてきた常識・経験値・善し悪しの羅針盤がまったく頼りにならず、ぐわんぐわんと狂い歪み、当の本人に聞いても「そのほうが面白いかなって」くらいしか答えてくれないし、だから(いいのか?みんな受け入れている、だと……?)と自問自答を繰り返すしかない。これまでの羅針盤を見つめ直すような経験を都会のみんなにも体験してほしかった。
あるいは単純に、想像力と手作りで、ゼロから人を求心してる民間プレイヤーって実はすごいんだぞってところを見せつけたかった。都会びいきだった過去の私に、そしてそれぞれの持ち場でがんばってる同志に。
……いや、ちゃうな。今も都会や最先端に引け目を感じていつまでも「都落ち」と感じているのは、私自身だ。カビの菌糸のようにしつこいコンプレックスを断ち切るために、己の盾を叩いて自分自身を鼓舞するために。ローカル独自の野生の戦い方を都会の人たちに認めてもらいたかったのかもしれない。
ONの激務の間を縫って、なおOFFの余白にも手を抜かないプロ。
大阪奥地のハードモードにも関わらず、とよのパビリオンでは愛とも呼べるプレゼントを用意してくれた乃村工藝社さん。
ちいさな町のちいさな団体の私たちに心を寄せてくれた姿、プライベートと割り切りながら最後の最後までクリエイティブと意義を詰めていく姿に私は何度も立ち会っている。とよのパビリオンの時なんか、梅田の喫茶店で閉店間際まで豊能町についてヒアリングと企画会議してくれたからね。(楽しかったですね!)
一流大企業でそんな立ち回りをすることがどんなに大変なのか、細部まで知ることはできないけれどたぶんめちゃくちゃ大変で、たぶんめちゃくちゃ珍しい。まさに文字通り「有り難い」存在だと感じる。厳しい面と柔らかい面とを持ち合わせているこの人達が、とにかく私は大好きなのだ。
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ジョーさん、中さん、乃村工藝社さん、この3チームの力をお借りして「都会で余白を求めて彷徨ってる人たちに、お手本を見せつけたい」これが私の個人的裏テーマだった。
破壊と創造のエンドレスキャッチボール
JR大阪駅南側の歩道空間は、その名のとおり「歩道」でありイベントスペースではない。各百貨店やバスロータリーが隣接し、目の前の交差点は片側4車線もあり、まさに大阪の玄関口。
多様に人間や車が行き交うこのエリアで、みんなが安全・安心して楽しめる「大阪市公認の万博イベント」として慣行する。これはdemo!expoや私だけでなく、行政も警察も企業も含めた全員にとっての《 前例作り》で、一様にピリピリしていた。
すべては安全のため──。それは絶対。これまで体験したことのないレベルの規則と制約の数々が編み目のように、このエリアを守っていた。企画のフィードバックは夜22時に伝達され、対案のリミットは12時間後の始業直後の朝のタイミングに……なんてこともザラで関係者全員1日48時間計算じゃないと間に合わない、破壊と創造のキャッチボール。
すべて形になった後のイベントの完成形を見たら、なんてことはないのだろう。「好き勝手やってんなー」でしかないのかもしれない。楽しそうに見えるほうがきっと正解なんだけど、せめて自分のブログでは記しておきたい。
あの日私たちが最後の最後まで堅く誓っていたのは、理由あっての制約に対して、法の抜け道のような付け焼き刃ではなく、正規ルートのルールを守る解決策を目指して、知恵と工夫でひとつひとつクリアしてきた結果だった。
こういった背景には、demo!expoの今村さん、クリエイティブDのしまだあやさん、総合演出の儀間さん、イベント全体の安全管理・監督をしてくれた星見さん、設計のtamari 寺田さんといった、都会のプロフェッショナルたちによるうわべでない核部分のサポートの賜物である。きょう何徹目?みたいな状態でもひとっつもイヤな顔をせず、ちいさな町でのDIYしか知らない私たちのやりたいことをできるだけ大切に尊重し、きめ細かく向き合っていただいた賜物である。
菓子折りをいつでもドローンで飛ばせるサブスクがあったら絶対契約してたなってくらいに各方面には頭が上がらない。
1日だけのゲリラ的実験がやがて普通の風景になっていく「タクティカル・アーバニズム」
そうした激務の中、demo!expoのしまだあやさんが、「今回梅田のパブリックスペースを使って、地域・行政・警察と協力して、民間の私たちが挑戦し成し遂げようとしていることは《「タクティカル・アーバニズム」の最適実践例 》にあたるらしいよ!」と教えてくれた。
一言でいうと、タクティカル・アーバニズムは、「まずは市民の手で小さなアクションを起こし、長期的な変化やムーブメントにつなげよう」という、プロジェクトベースのまちづくりの考え方なんです。「ポップアップ・アーバニズム」、「ゲリラ・アーバニズム」とも似ています。
海外で注目されているタクティカル・アーバニズムの考え方を日本にも広めている第一人者の泉山塁威さんの記事をさらに読むと、
「タクティカル・アーバニズムにおいて重要なことは、「小さいアクションから始める」という点。」
うんうん。小さい実験得意です!
「最終的には行政や地域に認められたプロジェクトとして日常の中で常設化していく。そうしたプロジェクトが、よく練られたタクティカル・アーバニズムなのです」
わ、これなんかめっちゃ勇気が出る話じゃないです!?(ほぼ手弁当で小さな実験を繰り返している、お祭り好きの面々をちらっとみる)
【生成AI音楽 x まちづくり】EXPO OPEN STREET/ STREET WORKSHOPのミュージックビデオ・レポート
そうこうして怒濤のようにできあがった10月13日がこちら。
うーーん、まだまだ書き切れてない!後半へ続く。後半は各ブースの紹介をやっていきます!
2024年10月13日(日)
「EXPO OPEN STREET / STREET WORKSHOP」
@JR大阪駅 南側歩道(公開空地)
半年後の大阪万博に向け、JR大阪駅という玄関口から”まちを開いていく”。大阪のまちや文化の面白さを、人・エンタメ・音楽が楽しめるスペースづくりを通して発信するとともに、国内外からのお客様を迎え入れる姿勢と、未来へひらく想いを込めたイベント。
[主催] 一般社団法人大阪梅田エリアマネジメント
[共催]大阪市
[プロデュース]一般社団法人demoexpo
[STREET WORKSHOPプランナー]宇都宮頼子(一般社団法人とよのていねい/EXPO酒場 豊能店)
STREET WORKSHOP スペシャルサンクス!!
順不同・敬称略
◯手が長い人になって過ごす
こどもオモ部主宰 ジョー(的場聡子)
◯ハッピー通貨特区で過ごす
モルックドーム 中博司
◯ビニール傘の転生!アップサイクルワークショップ
乃村工藝社 ✕ octangle[オクタングル]
◯写真撮影協力:NOSE KNITs(のせニッツ)
◯当日ボランティアで手伝ってくれたみなさん
◯demo!expoメンバー、本PJプランナーのみなさん
◯EXPO酒場を通じて私たちを助けてくださった方々