2023年4月に事業をスタートされたRe:LiFe+(リライフプラス)の浅野博史さん。
浅野さんは理学療法士として大阪府豊能町を中心に活動しています。理学療法士でありながら、まちづくりにも関わっている理由や、地元・豊能町で事業をスタートしたきっかけなど、浅野さんにお話を伺いました。
一番輝けるその瞬間に、寄り添いたい
浅野さんは、尼崎にある病院で理学療法士として11年間勤務。介護保険分野の訪問リハビリ・通所リハビリのリーダーとして立ち上げから携わり、現場の管理運営を経験されました。
─理学療法士を目指そうと思ったきっかけは?
高校生の頃、サッカーで腰のヘルニアになってしまったんです。その時に、トレーナーにお世話になったことがきっかけです。身体の仕組みや、トレーニング、ケアの方法などに興味を持ち始め、高校生のときにリハビリ病院の見学にも行きました。
─ すごい行動力ですね!病院勤務を辞めて、事業を立ち上げようと思ったのはどうしてですか?
介護保険制度の中では、できることや時間が限られてしまい葛藤することが多かったからですね。
例えば、利用者さんが「映画を見に行けるようになりたい」と言った時に、自分の足で歩けるようにするために運動面のサポートはできるんです。でも、「一緒に電車に乗って映画を見に行く」という移動面のサポートは難しいんですよ。
他にも、「電球を変えて欲しい」といった生活面のお願いは担当外になってしまうなど、「浅野さんだからこそお願いしたいのに」という声に応えられない面が多く、もどかしく思っていました。
身体的なケアだけでなく日常の些細な困りごとも含めて生活をサポートするパートナー・伴走者として、利用者さんが一番輝ける瞬間に立ち合いたいという思いから事業を立ち上げました。その人らしく人生を送れるようサポートしていきたいと思っています。
生まれ育った町のにぎわいを次の世代にも
浅野さんはアメリカ生まれ。お父様の転勤で、小学生から豊能町で過ごします。結婚を機に、現在は奥様の地元である池田市へ。開業後は、事務所のある豊能町でほとんどの時間を過ごされています。
─ 当初、尼崎市で勤務されていましたが、地元の豊能町へ戻ろう、ここで事業をしよう!と思ったきっかけはあったんですか?
娘が生まれ、豊能町の実家に帰る頻度が増えました。その時に、公園に誰もいなくて寂しい気持ちになりました。僕は豊能町に子どもがたくさんいる時代に育ってきたので、「娘にもにぎやかな町の姿を見せてあげたい」「地元に自分の力を貢献したい」という思いが芽生えました。
─ なるほど。それでまちづくりにも携わるようになったんでしょうか?
父が海外勤務だったこと、姉が発展途上国で活動していたこともあり、社会問題や地域課題について家庭内でよく耳にしていたことが背景にあるかもしれません。大学では地域コミュニティ分野「地域理学療法」を学びました。卒業論文のテーマは「CBR:Community Based Rehabilitation 地域に根ざしたリハビリテーション」とし、「地域理学療法」の発祥の地、インドネシアへ調査にも行きました。
─ 高校生時代もリハビリ病院へ見学に行ったりと、昔から行動的だったんですね。現在も、町のいろんなところで浅野さんの姿をお見かけするほど、様々な場所へ足を運ばれていますね。
今はまずたくさんの人に知ってもらうことが大事だと思っています。2022年に参加した豊能町の事業「トヨノノ応援会」の交流会(現在は地域団体「とよのわ」)をきっかけに、町で活躍しているプレーヤーの方ともたくさん繋がりました。Instagramではyaoyamさんと出会い、農園開放日に参加したことがきっかけで、現在は農業トレーニング「とよのアグリブ」や地域団体「とよの場」を一緒に展開しています。自分が起業当初に想像していたよりもいろんな事が走り出しています。個人事業主だからこそできる自由さを活かしながら、輪を広げていきたいです。
「自分らしい暮らし」をサポートするパートナー
とよのていねいのスペースでは、「やりたいことリストからみえる健康予防トレーニング」「認知症予防講座」を開催していただきました。
─ 今回実施した企画に対する思いやこだわりのポイントはどこですか?
認知症は「なりたくない」というネガティブなイメージを持たれている方が多いと思います。認知症は自宅で過ごせなくなる理由の1位でもあり、4人に1人がなると言われている時代です。健康予防は、ならないことの予防ではなく、リスクを抑えたり、早期発見や早期対応が大事だと感じています。
理学療法士の視点で、座学だけでなく身体アプローチや日常生活の中の工夫をお伝えする企画になっています。住んでいる町で長く住み続けられるようサポートしていきます。
例えば、普段何気なく行っている「新聞を読む」という行為でも、曜日の確認をする・新聞を取りに行く・指定の位置に片付けるなどたくさんの動作が含まれます。それらを意識して行うだけでも活動量が増加し認知症の予防に繋がるんですよ。
その他にも、ゴミ捨てに行くついでにご近所の方と挨拶すると、社会的交流も増えます。こういった些細な工夫をその人の生活に基づいてアドバイスしていきたいと思っています。
また、そばで支えているご家族の思いは当事者に伝わるので、みんなでポジティブになれるよう、ご家族やあるいは施設関係者の方にも是非参加して欲しいですね。
最後に屋号に込められた思いを聞きました。
屋号の「RE:」は「再発見」「元気にする」「結びつける」、「+」には「つながり」「新しさ」「希望」などの意味があるんです。
町の魅力を再発見していくこと、豊能町の人や関わる人に活力を与えられる事業を展開し、人々の繋がりを大切に、成長し続けるという意味が込められています。
「理学療法士である前に人である」という恩師の言葉をモットーにしていて、相手にまず興味をもち、自分にも興味を持ってもらう、そんな関係性を築いていきたいですね。理学療法士として身体はもちろん、心の面でも自分らしく過ごせるようにサポートしていきたいです。
─ ロゴは大文字と小文字が混ざっているんですね。
大文字は大人、小文字は子どもを表しているんです。子どもから大人まで多世代に関わり、地域に根ざしていきたいです。
今後は、現役世代向けにダイエットやボディケアの勉強にも挑戦していきたいという浅野さん。気さくなお人柄なので、起業して1年で世代を越えて愛されています。リブランディングを担当する「とよのサイダー」のクラウドファンディングではたくさんの支援者が集まりました。地域のために行動を起こす浅野さんは、そのフットワークを活かして地域のキーマンになりうるでしょう。今後の活躍にも目が離せません。
浅野博史
Re:LiFe+(リライフプラス)代表。2023年4月より大阪府の北摂に位置する豊能町にて事業開始。現在は、池田市に居住しながら豊能町で主に活動中。事業内容は、主に理学療法士としての経験を活かした健康サポート事業や移動支援のための福祉タクシー事業を展開している。また、豊能町で活動をしている方々と連携を取り、地域おこし団体「とよの場」運営にも携わる。
Instagramでは、利用者様の日常の困りごとをサポートする様子など日々の活動記録が綴られています。