舞台裏までまるごと施設開放!ユーベルホールで謎解き探検

by 頼子 2022年4月15日

2022年2月20日。町民におなじみのユーベルホールが1日限定で、子どものための夢空間へ大変身したことを知っていましたか?しかも施設まるごと、です。

仕掛け人は、豊能町教育委員会 こども未来部生涯学習課と、のせでんアートライン妙見の森実行委員会。「『わからなさ』??を肯定する!!ワークショップ」と題して開催されました。

順位も答えもない。「よくわからない」でいい。

「『わからなさ』??を肯定する!!」と言われましても……な方、たくさんいらっしゃると思います。安心してください、私もでした(笑)。

一体全体、このワークショップはどういう趣旨だったのか、当時の案内を引用しておきます。このメッセージは、のせでんアートライン(以下、アートライン )に長年関わり続け、今期のアートプロジェクトマネージャーでもある田中郁后さんからです。読み終えるころには、肩がすっと下がるような気持ちになるはず。

「アート」や「哲学」について「よくわからない」という方は多いと思います。結論からいってしまうと、わからなくていいのです。ただそこで大切なことはその時点で「わかろうとするのをやめないこと」です。その「わかる」ためには、よく見て、考え、想像を巡らせる必要があります。もしかしたら本を読む必要もあるかもしれません。そこからがスタートです。

そのスタートのために、今回のワークショップを企画しました。今回行うワークショップには「順位」も、用意された「答え」ありません。だけどもしかしたら、あなたは自分で「答え」を見つけるかもしれません。でもその「答え」には「正しい」も「間違い」もないのです。そうなると、けっきょく最後まで何も「わからない」まま終わるかもしれません。

ここではただ「自分を表現できる場所」を用意しました。まず自分を表現するためには、自分の得意な表現方法を探す必要があります。人前で話すのが不得意でも、線を描くのは得意かもしれない。線を描くのが難しくても、音を鳴らすことはできるかもしれない。もしかしたらここであなた自身を誰かに伝えるための方法が見つかるかもしれない。

そしてみなさんはそのうちきっと「表現したい自分ってどんな自分だろう」と考え始めるのではないかなと思います。そうなるとしめたもの。そんなことを考えて、ワークショップ担当みんなで楽しみながらいろいろなものを準備しました。

でもみなさんはそんなことは気にせず、ユーベルホールの中を自由に歩き回って、好きなように身体を動かしてみたり、線を描いたり、ガムランを叩いて楽しんでください。他にもレゴブロックで遊んだり、インスタントカメラで写真を撮ったり、宝探しもできます。ただ楽しむ、それだけで十分です。

案内パンフレットより

表現者か鑑賞者か。未来のアートラインをもっと楽しむための壮大な計画。

ここからしばらく自分語りになりますが、私はアートラインに、一般参加者としてあるいは運営側としてどちらも関わってきていまして。アートに関して造詣が深いわけではまったくなくて、どっちかというとアートやアーティストに劣等感を感じて生きてきました。だからこそ同じような方に伝えたいことがあります。

私のつたないアート観賞ってやっぱり毎回「なんだろこれ、わからん……」が出発点なんです。すぐ隣で「わかる!」「いい作品!」と即答できる、ものわかりが良い人を横目に、なんだよ、なんなんだよ……と思いながら、作品に添えられた案内を読んで反芻しながら、首をかしげてとにかくじっと見てみる。1ピクセルでもいいから、自分の人生や考え、知識、あるいは感情が一瞬ピッ!と並走できる共通点を探すんです。不慣れだからめちゃくちゃ時間がかかるし、そんなに楽しくない作業なんですよね。(この後、導き出した自分なりの答えを誰かと共有して考察しあうのが、最高に楽しいんですがこれはまた別のお話)

「わかろうとする」ためには、その作品に当ててみるたくさんの物差しが必要で。目盛り違いの物差しをたくさん、かもしれないし、形違いの物差しをたくさん、かもしれない。今回のワークショップは、子どもたちが物差しそのものを増やすきっかけになったり、今後自力で増やしていくための練習場でもありました。

「『わからなさ』??を肯定する!!ワークショップ」は、豊能町と地域芸術祭であるアートラインを愛する人たちが、10年20年後をも見つめた大掛かりな計画。豊能町の子どもたちが表現者となるにせよ鑑賞者になるにせよ、どちらの側面でもアートとの関わり合い方を学ぶ練習なんだな、と主に鑑賞者側の人生を送るわたしは思うのでした。

宝でも探しながら休憩してほしい

今回のワークショップは一見ふんわりしていながら、前段でも述べたとおり、かなり骨太な内容でした。講師陣も以下の通りの豪華な顔ぶれ。

  • のせでんアートライン2021の出展作家でもあった橋爪皓佐氏
  • 豊能町で「子どもの哲学教室」を開催されている山田奈津美氏
  • 狂言方でありながら絵画教室の主宰、GIFクリエイターでもある安東睦郎氏
  • 声楽家・ガムラン奏者で「たんぽぽの家」のスタッフでもある大井卓也氏

ギュッと濃度が濃ゆ〜いプログラムが並ぶなかで、気分転換用のお箸休めコンテンツを何か企画してくれない?と一般社団法人とよのていねいにご依頼いただき、「謎解き探検!ユーベルホールの宝物」プログラムを担当することになりました。

ユーベルホールの裏側まで特別開放!ナゾ解きコンテンツ

「謎解き探検!ユーベルホールの宝物」とは

ユーベルホールに散りばめられた数々の謎を解き明かしながら、普段は入れない楽屋やリハーサル室などの舞台裏までくまなく探索する謎解きゲームです。

施設内に隠された7つの謎を解くと、最後の謎が隠された場所がわかる仕組みになっています。

小学生低学年でも迷わないよう、次の謎へと誘う矢印と帰り道がわかる矢印を床に貼りつける親切設計。安心して子どもたちだけで謎を探しに冒険できます。

矢印に勇気をもらってガンガン進む!

「こんなところまで入れるなんて、めったにないよ!」と子どもより大人が興奮してくれる事態に小さくガッツポーズ。ユーベルホールにまつわる謎も散りばめているので、自然と博識になれちゃいます。

わたくし、テレビ番組の「はじめてのおつかい」のカメラマンよろしく、こそこそと後ろから子どもたちが迷わないかを見守る役だったので、リアルに楽しんでくれている姿を間近で見れたことがご褒美でした。

「よし!つぎのなぞだ!」と駆けてゆくイキイキとした姿。小さい子に、正解というイイところを譲ってあげる優しいお兄ちゃんお姉ちゃんの姿。

ユーベルホールって3階まであるんですよ


謎解きも大詰め、自画像を描くミッションでは、鏡を見ながら真剣に自分の顔を描いてくれました。マスクや怪我のキズ跡まで忠実に描いてくれて、みんな素直!

見事、最後の謎まで辿り着きミッションコンプリートできた人は最後に記念撮影をパシャリ!

写真はお土産にプレゼント

子どもたちの自画像はホールの最前列にズラリ

イベント後半の大発表会では、参加してくれた子たちの個性豊かな自画像を座席最前列に展示。まるでみんなが舞台を観覧しているかのようなサプライズな光景に関係者一同が驚きました!ユーベルホールで過ごした時間や体験が豊かなものだったと感じられるステキな景色です。

今回大活躍してくれたスタッフ

謎解きコンテンツというはじめてのチャレンジでしたが、そのほとんどを相澤さんと宮田さんが(たった2人で!)仕上げてくれました!

今回の対象年齢、小学生低学年のママでもあるふたり。ママだから寄り添える「わかった!」や「たのしい!」の瞬間が散りばめられた温かな謎解きコンテンツが出来上がりました。ふたりともお疲れ様!

写真左から宮田 佐也佳さん(小道具・美術担当)相澤 由依さん(企画・制作担当)

あとがき

豊能町が誇る、ユーベルホールという文化施設。「あー楽しかったな」で今は過ぎてしまったとしても、子どもたちの心の中で大切な思い出として残り続けてくれることを願っています。

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