私はとにかく驚いていた。
年齢もバラバラ、特性もバラバラ、多様性に富んだ総勢30名の小学生男子&女子が《全員、没頭し続ける》という状態とその空間を目の当たりにして。
※ この活動は、子どもゆめ基金の助成を受けて実施しました
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2021年8月13日、夏休み真っ盛りの日、「とよのしごとLABO 〜まちの人としごとを学ぶ〜」を開催しました。
「とよのしごとLABO」とは、豊能町に住む子どもたちが町の人から「仕事」について学び・体験できるイベント。その講師として、まず真っ先に声をかけたのが『Good_at プロジェクト』でした。現役プログラマーのおとな、子どもにパソコンを教えるのが得意なおとな、困っている子たちをサポートするのが得意なおとなが揃った、ザ・安心の布陣で、本イベントの趣旨ともぴったりだったのです。
子どもゆめ基金の助成を受け、実現が叶った本イベント。数ヶ月……否、さかのぼると1年半前から温め続けたこのプロジェクトをやっと!やっと一歩進めることができる──、そんな万感の思いも実は抱えていました。
豊能町発の「Good_at プロジェクト」は、コロナ禍の影響でいまだに初回開催が保留状態であるにも関わらず、その意義と社会性の高さについて町内外の注目を集めていました。そしてまた、プロジェクトの発足と歩みに弊社も大きく関わらせていただいています。
参考記事
なお、タイミング的に緊急事態宣言下での開催となりました。特に次のことに留意して開催しました。みなさまのご理解とご協力に感謝いたします。
- スタッフや参加者のマスクの徹底
- 常時換気
- 手指や設備へのこまめなアルコール消毒
- 密にならないように
- 大部屋を2部屋借り切って
- 定員を絞って
- 2回に分けて開催
《得意》に集中する1日
本イベントでは参加するお子さん以外は会場内に入ることができませんでした。保護者の方でさえも送迎のみに留めていただいて。
これは単純に感染症対策の一環という観点もありますが、子どもたちが親の目を気にすることなく、自分の《得意》に集中してもらうためでもありました。わが子を傍で見れる環境だと「この方がいいんじゃない?」とついついアドバイスしてしまう親御さんもいらっしゃるのでは、という懸念点があったためです。学校ともご家庭とも違った環境で取り組んでもらうことを重要視しました。
開場時間になると、続々と集まってきてくれた子どもたち。
この日は1日大雨だったにも関わらず、午前の部、午後の部あわせて総勢約30名の子どもたちが参加してくれました。雨の中の送迎にご協力いただいた保護者の皆様、ありがとうございました!
いよいよイベント開始!
まずはGood_atの講師紹介を。
左写真で直立しているおとなたち、左から、大村みどりさん(こどもプログラミング教室「ひなたぼっこ」)/司会の弊社スタッフ/作業療法士の中西 亜弥さん(リィーノこどもセラピー)/現役プログラマーの宇都宮 正宗さん(大学堂株式会社・一般社団法人とよのていねい)です。
先生の紹介 プログラミングについての座学
続いて「職業:プログラマー」としても活躍する、宇都宮さんからの座学コーナーです。「プログラミングを使った職業って?」「プログラミングのために普段からできること」について、本職ならではの観点でお話ししました。
体で覚える「ダンス、ダンス、ダンス!」
お話しの時間が続くと、誰でも集中力が薄れてくるもの。約2時間にわたるイベントだったため、画面を離れ体を動かして気分転換できるようなコーナーを用意しました。
リフレッシュするだけでなく、体を動かしながら「プログラミングに必要な考え方」が身に付く遊びに挑戦。パネルを組み合わせる「プログラマー」役と実際に体を動かす「コンピューター役」にわかれて、いざ実行!
ホワイトボードがわりに持ってきた、
すだれのせいで屋台みたいになってます。僕がプログラマー、みんなはコンピューター。
プログラムを実行してみよう!元気よくキック!
大好きなマイクラでプログラミングに挑戦
使用したプログラミングソフトはHour of Code(アワーオブコード)社による、子どもに大人気のマインクラフトの世界。今すぐにでも始めたい子どもたちでしたが、実際に取り組む前に、大村さんから基本的な操作についてのレクチャーを。
大村さんは、事前のスタッフミーティングで「始めの第1章でやり方を教えてあげたら『あとは、はいもう自由にどうぞ!』状態で、子どもたちが自分たちでどんどん進めちゃうと思います。」とおっしゃっていたんです。
……本当でした。
休憩時間も忘れるくらい、超・集中モードで取り組み続けた子どもたちのようすをどうぞ。
真剣そのもの つまづいても途中であきらめません 楽しそうな表情はマスク越しでもわかります 思い思いの集中スタイル 配られたプリントも活用しミッションに挑む 友達同士で教え合いっこ おとなが感心させられることもしばしば わかった瞬間の笑顔がたまらない あえて難しいコースを選ぶ クリア後もなお、高度な設計を探して再チャレンジ 繰り返しチャレンジすることで問題点を見つける心の強さ それぞれの価値観でミッションに取り組む
やんちゃっ子から控えめな子まで、いろいろなタイプが集まった30人の取り組み方はそれぞれ。つまづいたらすぐにスタッフに視線を送ってくれる子(かわいい)、ヒントをあげると「ああ〜!」と大きくうなづいてさっそくチャレンジしてくれる子(かわいい)、眉間にシワを寄せながら寡黙に取り組んでステージクリアできると「よっし」と小さくガッツポーズを取るクール男子(かわいい)。
それぞれの子どもたちの豊かな可能性と、いろんなタイプのキラキラ輝いた表情があふれる空間に、わたしたちスタッフは驚いたり、頬をほころばせたり、感心したり。
おとなだけじゃない、大学生・中学生も「先生」に
ジャスチャーで右回転か左回転かを伝える大学生スタッフ プログラミングが得意な中学生スタッフも
ていねいに教えてくれました
「《得意》を持ったおとなが子どもたちに教える」こともGood_atのコンセプトのひとつなのですが、今回嬉しいことに地元の大学生や中学生もメンタースタッフとして参加してくれました!「とよのしごとLABO」の教える側として関わることで、彼らもまた仕事や進路について考えるきっかけになってくれれば嬉しいです。
年齢の近いお兄さん&お姉さんから学ぶのって、ちょっと新鮮で素直に受け入れることができたりするもんです。おとなとは違った視点での伝え方・受け取り方がありそうですよね。
『イベントを通じて《得意》を見つけた子たちが、いずれ未来の小学生に教える』という理想のサイクルを見ているようで、またもおとなたちは(かわいい……)と眺めるのでした。
よくがんばりました!最後は表彰式
大村さんから名前を呼ばれ、取り組みや姿勢に対する一言を添えて、ひとりひとりにカッコいい表彰状が授与されました!
子どもたちが困らないための環境づくり
会場には「子どもたちができるだけ困らないように」と大人たちが知恵を寄せ合い作ったり・持ち寄ったアイテムがたくさんありました。普段から様々なタイプの子どもたちと接し、サポートしているからこそ発案されたアイデアの数々は、Good_atならではの魅力のひとつ。ぜひここで紹介したいと思います。
①クールダウンのための「ティピーテント」
プログラミングが行き詰まって頭がパンパンになっちゃった子がクールダウンするなど、ココロの一時避難ができる場所として。
本当は段ボールなどで仕切るだけでもいいとのことだったのですが、手ごろな段ボールがなく我が家にあったティピーを持参。図らずも楽しげになりました。
②そっとSOS「手伝ってカード」
慣れ親しんだクラスならまだしも、お互い“はじめまして”な状況の小学3年〜6年が入り混じった本会場。引っ込み思案な子は、分からないところや困ったことがあっても言い出せないこともあるかも……。
リィーノ中西さん作の先回りした優しさ、それが「手伝ってカード」。このカードは、手をあげるのが恥ずかしい時に発動!他の子どもたちの視線を浴びることなく、まわりのスタッフが気づいてそっとサポートします。
そのほかにも、残り時間がよくわかる視覚タイマー 、可視化された当日プログラム一覧(記事冒頭で紹介)、注目して欲しいときのチャイムなどの知育ツールを用意。
「子どもたちが周りから取り残されたり、不安になったりすることのないように。」
おとなが工夫したり環境を整えることで、のびのびと《得意》に取り組めるようアイデアをちりばめた本イベントでした。
先生からのひとこと
参加者してくれた子どもたちへ講師陣からのメッセージを集めました。
大雨の中、来てくれたみなさん、ありがとうございました。 プログラミングは楽しめましたか? マイクラのキャラクターに大喜びの子。 「やさしい・ふつう・むずかしい」から、迷わず「むずかしい」を選んでチャレンジした子。 ミッションをクリアしなくても、自分がプログラムした通りにキャラクターが動いた事にご機嫌だった子。 クリーパーにつかまってしまっても、嬉しそうに「あーあ」と笑っていた子。 何度も溶岩に落ちてしまい、どうすれば良いかたくさんたくさん考えぬいた子。 脇目も振らず、黙々とプログラミングし続けた子。 よりカッコいいプログラムを仕上げることに注力した子。 自由制作で、自分だけのワールドを創ることに目を輝かせていた子。 どの子もみんな、自分なりの楽しみ方をそれぞれ見つけて、飽きることなくイベントの時間を過ごしてくれたことが、とっても嬉しかったです。 私がはじめてプログラミングに触れたのも小学3年生の頃。 自分で作ったプログラムが思ったとおりに動いたときの高揚感は、あれから40年経った今でも、まだしっかりと覚えています。 みなさんにとっても、このイベントがそんな忘れられない思い出の1日になってくれたなら、本当に嬉しいです。 参加してくれたみなさん、ご協力頂いた保護者の方々、ありがとうございました!!(大村 みどり)
新しい場所、お友達、大人という環境で、最初は少し不安な顔をしていたお友達も、プログラミングが始まるとみんな夢中になって取り組んでいた姿が印象的でした^^ どうしたらいいのか分からなくなってしまっても、最後まで諦めずに色々と試してみたり。 普段大人しいお友達が、クリアできたときに「よっしゃ!」と小さくガッツボーズを見せてくれたり。 疲れてきてもちょっと休憩したら、もう一回やってみようとパソコンの前に自分から戻っていったり。 こんなの作ったよ!と嬉しそうに見せてくれたり。 学校で会う時とは、全然違うみんなの顔が見ることができてとても嬉しかったです。 今回のプログラミング教室が、みんなにとって世界を広げるきっかけになってくれたら嬉しいです。 またみんなで一緒に何かできる日を楽しみにしています! 楽しい素敵な時間をありがとうございました!(中西 亜弥)
失敗しても何度もやり直すすがたをみて、ほんとうにびっくりしました。すばらしいです。おじさんもこどものころ、プログラムだけじゃなく何をやってもみんなみたいにすぐにはうまくいかなくて、何度も何度もやり直してやっとできる、そんなことのくりかえしでした。大人になってからもしばらくは、ほかの人にとってかんたんなことが自分にはすぐできなくて、仕事でとても困っていました。
でも、すぐにはできなくても失敗しても何回も何回もくりかえしてできるようになるまでやることが、プログラムの仕事では長所に変わりました。ぼくが今回一番びっくりしたことは、みんな失敗しても何回も何回もできるようになるまでがんばったことです。このけいけんはきっと大人になってもいかせるはずです。もし何かにつまづいたとき、失敗してもがんばる今の君のことを思い出してくださいね。(宇都宮 正宗)
次回は11月7日に開催予定!
11月7日、コクレオの森さん主催「1日がっこう&里山ロハス」にて「Good_at」のプログラミング体験教室を予定しております!
会場や機器の関係で、どうしても毎回定員を決めなくてはならず「要予約」となっています。吉川でお会いできるのを楽しみにしています!