この地に伝わる生活の知恵「高山まな漬け」を見よう見まねで作ってみたら。

by 頼子 2019年4月18日

豊能町限定の特産品「高山真菜(まな)」。400年以上も昔(つまり江戸時代!)から脈々と受け継がれている伝統野菜です。

私たちが普段目にする野菜や果実は、ほとんどのものが時代とともに品種改良されたものですが、この「高山真菜」に限っては栽培が始まった400年前とまったく同じ姿のまま、代々続く農家さんが自家採種しながら大事に大事に守り育てています。

こんな感じで偉そうに語りはじめてますが、まぁわたしが真菜を食べたのって去年の冬が初めてだったんですけども。

雪の中でたくましく育った冬の高山真菜は煮物や鍋にも。

菜の花のようないでだちでありながら、食べてみると菜の花やなばなよりも苦味・アクは少なくて食べやすく茎なんかは想像よりも甘くて柔らか!とすっかりファンに。惚れ込んだ結果、うちの事務所の玄関を使って、野菜市を開き、旬の高山真菜を販売することになったのでした。

同じ町内でさえもなかなか手に入らない真菜は(全然関係ないですが高山をつけずに呼ぶと、付き合ってもないのに急に彼氏ヅラしだした奴みたいですね)販売開始からなんと約1時間で完売!その根強い人気を知ったのでした。

そんな愛され真菜の旬は短く、たった数ヶ月。先週が今年最後の入荷となりました。ちょうど桜もほころんで来る頃で、真菜の穂先にも春を感じるかわいい小さな黄色い花が咲いていました。

感動のフィナーレかと思いきや……

今年最後の入荷に加え、前回爆売れしたこともあって大量に仕入れたのですが、今回は様子がおかしい。「あら、花が咲いちゃってるのね」と違うお野菜を選ばれるお客様がちらほら。

見た目がそっくりな菜の花の場合は「花が咲いてしまうと茎が筋っぽくかたくなる」「つぼみを食べる食べ物であり花は食べられない」と言われることがあるそうで、もしかしたら真菜も同じ風に思われているのかもしれません。

……そんなことないのに!

というわけで最終ラウンドまで旬をくまなく楽しんだ「私」という勝ち組のようすをお送りします。

高山集落に古くから伝わる「高山まな漬け」

高山真菜の食べ方を探すと必ずたどり着く「高山まな漬け」。高山集落に古くから伝わる漬物で、旬の短い高山真菜を漬け込んで1年間大切に食べるのだそうです。へー。

そこで今回、調理法をまとめた冊子『豊能町特産 なにわの伝統野菜 高山まなア・ラ・カルト』を参考に「自家製 高山まな漬け]に挑戦してみました。

500グラムも集めると高山真菜はりっぱな花束。

レシピには1キロの高山真菜とあったのですが、先生もいない完全初心者なのでまずは半量の500グラムで。ちょうど2袋分の高山真菜を使いました。

水切りをしっかりしないと痛みやすいと事前に聞いたこともあり、サラダスピナーを使って、ひとつかみづつ水切り。花やつぼみ、葉がかなり柔らかいので、塩で傷つけすぎないよう、やさしくやさしくもみこみます。

あぁ、なるほど。この工程をなぞるだけでも、集落の方々がこの時期収穫された高山真菜を大事に大事に扱っていらっしゃるんだなと体感できます。

漬物樽も漬物石もない我が家。とりあえず家にあるもので挑戦。

花の咲いた真菜は、野菜というより花のかわいい印象が強く、フラワーアレンジメントをしているかのような気持ちに。だって、ほらなんだかミモザのリースみたいに見えてきません?(笑)

高山では、この時期集落で大量に漬け込むと言います。大量の仕込み作業って重労働でなんとなく苦行のようなイメージがあったのですが、真菜は花の可憐さも手伝って自分のための趣味時間のような爽やかなリフレッシュ効果が。

最後にあまった塩を振りかけます。レシピを見てもらえるとわかるんですが、茹でもせず生のまま、調味料は塩だけという潔さ。


漬物石のかわりのダッチオーブン蓋が、すし桶にシンデレラフィット。
憧れの「ていねいな暮らし」を実践しているはずなのに、このいかにも「間に合わせ」な感じが、我が家らしくて気に入っています。

4日目には食べられるとのことで、さっそく実食!

見てよ母さん!漬け物になっても色は鮮やかなままだよ!

食べる前にさっと塩分を洗いながして使用するのですが、食べて納得。
漬け物というより塩漬けですね、これ。

塩だけで浅漬けした真菜は、素材のシャキシャキ感や風味もきちんと残っています。他の味が邪魔しないので、フレッシュな野菜のように具材として調理しても楽しめます。

風味も食感も大事に残して、次の旬を待ちわびながら楽しむ。

高山まな漬けを調べると必ず「年間を通して大切に味わう」という表現に出会います。

生産地の豊能町高山地区では、新鮮なうちに塩で揉んでお漬物にし、年間を通して大切に味わうそうです。

JA大阪北部

塩分濃度を高くして、ただ保存食にしたというだけでなく「高山まな漬け」というレシピこそが、ずっと真菜を大切に味わえる調理方法として編み出されたんですね。

つくねとなますと高山真菜の和風ビピンパ。

こちらの高山真菜漬け、プロの方々がつくったものが道の駅「志野の里」や「右近の郷」などでも購入できます。
材料となる高山真菜の希少価値はもちろんなのですが、そのお漬物も今では地元の方々が自家用として仕込むのがほとんどで、なかなか市場に出回らないそうです。

神戸のくぎ煮、豊能の高山まな漬け

神戸には、新鮮ないかなごが獲れる季節に各家庭で大量の「くぎ煮」を作り、お世話になった人や親戚におすそ分けして、それぞれ少しづつ違う家庭の味を楽しむ風習があります。豊能町もこのくぎ煮の風習のように、各家庭の真菜漬けをおすそ分けして楽しむ風習があったらいいのに、なんて思いました。

花が咲いた高山真菜は食べられないの?

漬け物としてだけでなく、茹でたり炒めたりして万能に使える高山真菜。
はたして「花が咲いてしまうと茎が筋っぽくかたくなる」のでしょうか?

結論から言いますと、ぜんぜんそんなことはありません。花が咲いたものは若干茎の部分がしっかりしたかなという印象はあるものの、菜の花に比べ茎が華奢なので口の中にスジが残るなんてこともなく、例えるならニンニクの芽くらい。

我が家では、下の方のすこし歯ごたえのあるだけをあえて使って、炒め物にしていただきました。上の方は、別途お吸い物にいれたり塩茹でにしておひたしに。

ぜひ来年は、高山真菜の旬をフルで楽しんでみてください。


もっと高山真菜を知りたくなったら「トヨノノPORTAL」のYoshimiさんが書いた記事も合わせてどうぞ!

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