ドキュメンタリー映画『ノマディックのこと 大谷さんちの4か月』上映会に行ってきました

by yu1 2022年7月25日

2021年秋に開催された「のせでんアートライン2021」の地域プロジェクト企画のひとつ、ドキュメンタリー映画上映会『ノマディックのこと 大谷さんちの4か月』。このドキュメンタリーは、大阪府能勢町でお弁当やお惣菜のテイクアウト・デリバリーを専門とした「ノマディック」を2021年6月末に閉店し、2021年10月末に本と食のあり合う場所『TOGO BOOKS nomadik』を開店するまでの大谷さん一家に密着した4か月間の記録です。

豊能町・中西商店にクリエイターが集って生まれた企画

このプロジェクトの主催者は豊能町でコーヒーショップを営むEMMA COFFEE / 中西商店 4代目店主 中西信一朗さん。
長年豊能町で日用品店を営んできた中西商店の2階にクリエイター向けコワーキングスペースを開設しました。クリエイターが町と関わりが持てる仕組みを構想されています。地域コミュニティーとしての役割も大きかった中西商店のかつての姿も大切に、次の役割を模索。のせでんアートラインの会期中には、クリエイターの方と制作したドキュメント映像を中西商店にて公開しました。(中西商店さんにて行われた上映会の様子は、豊能町公認ライタートヨノノレポーターさんがレポートされています。記事はこちら

ドキュメンタリー映画の舞台『TOGO BOOKS nomadik』で上映会を開催

実は、アートライン会期中に行われた上映会に私は参加できることができず、「いつかまた見れないかな?」と残念に思っていたところ、2022年6月にドキュメンタリー映画の主人公である大谷さん夫妻が営む『TOGO BOOKS nomadik』さんで上映会が開催されることになりました。
6/12(日)夜の部と6/15(水)昼の部の2日間上映され、12日にはトーク『撮ることと撮られること』、15日には、映画音楽を担当されたSHUさんのハンドパンライブが行われました。
わたしは今回15日の回に参加させていただきました。

お昼間に開催された今回の上映会。当日の能勢は雨上がり独特の草花が呼吸している香りと露が煌く新緑の美しさが印象的でした。カーテンで薄暗くなった会場に続々とお客さんが来場し、上映がスタートしました。

能勢の風土と人の温かさがあふれる優しい時間

ドキュメンタリー映画を見て、一番印象に残ったところは大谷夫妻のお互いを尊重しあう姿でした。奥さんの能勢の自然やこどもたちに対する思いや振る舞いを「まるで野の花のよう存在だ」と言う政弘さん、「能勢で子育てをしたいというわたしの思いを尊重してくれた彼。そんな彼の夢を叶えるべく一緒につくりあげていきたい」という愛さん。そんな夫婦を取り巻く周りの人々や能勢の自然。そのすべてが温かく、優しさで包まれていました。


今回、撮影・編集・監督を担当されたのは北中康雅さん。大学卒業後、ドキュメンタリー映画監督・原一男氏に師事されたそうです。企業VPやWebムービー、ブライダル映像などの演出・撮影・編集を担当する傍らで、今回のドキュメンタリー映画の撮影を機に、人に寄り添った映像、地域に密着した映像の撮影・編集をされています。
「とにかく人の話を聞くことが好きなんです」という北中さん。とても柔らかい雰囲気の方で、不思議とどこかで出会ったことのあるような懐かしさを感じました。そんな北中さんだからこそ、撮られる人が自然体で温度感のある映像が生まれたのだろうなと想像できました。

ご挨拶をする北中さん(写真右)

「生まれる」をテーマにしたハンドパンの演奏ライブ

上映後は、音楽を担当したSHUさんによるハンドパンライブ。
映画で起用された曲「あの娘」、最新曲も併せた3曲の演奏でした。どの曲も「生まれる」をテーマに作曲されたというSHUさん。ご自身もまだ小さい赤ちゃんと一緒にご家族でこの上映会に参加されていました。今回はじめてハンドパンの演奏を聞かせていただきましたが、柔らかい音色がドキュメンタリー映画にも『TOGO BOOKS nomadik』の空間にもぴったりでした。ノマディックさんのお弁当を食べながら聞くライブはまさに贅沢空間。最後の曲は目を瞑って聞いていると、心地よくて眠ってしまいそうなくらいでした。

見る人によって印象が変わるから、ドキュメンタリーは面白い

ライブで会は終了の予定でしたが、特別に監督の北中さんと、企画協力者の立花之輝さんのトークをお聞かせいただきました。企画協力者の立花さんは、能勢周辺の地域やお店のWEBサイトなどさまざまなデザインや、大阪府6次産業化プランナーとして能勢の特産品のブランディングなどを手掛けられています。
「2時間のドキュメンタリー映画は長いのでは?」という立花さんからのぶっちゃけコメントが。北中さんからは、「実は今回4分だけ短くなりました!」とのこと。

コメントをひとつ削るだけで観る側の印象が大きく変わってしまう場合があるそうです。
また、大谷夫妻に一対一でインタビューした内容を随所に分けて編集されているそうですが、「一貫してお二人の芯にある想いは最初から最後まで変わらないのだと思った」とお話されていました。

大谷愛さんからは「ドキュメンタリー映画は見る人によって、どの人が主役になるか変わるので、そこがおもしろい」と他のお客さんからご意見があったとお話いただきました。

実際に立花さんは、複数回この作品を見ている中で、今回は大谷さんのお子さんが通う里山共同保育「きららの森の家」の場面が一番印象的だったとおっしゃっていました。人によって、また、同じ人でも見たときのによって感じる部分が違ってくる面白さが魅力です。
もう一度ゆっくり作品を噛みしめたくなる、ふとまた見たくなる、そんな心地よい作品に出会いました。


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